
2008年6月 タイ・バンコク
シーフードレストランの前で、小さな男の子が水槽のえびを見ていた。
わたしがすぐ横にしゃがんでも、まったくこちらを見ない。
一生懸命にえびを目で追っている。
そのうちに、えびの動きに合わせて指で水槽のガラスをなぞり始めた。
だから、わたしも一緒になぞった。
けれども、男の子はえびだけを見ている。
まるくて黒い目で見ている。
まったく相手にしてもらえないわたしは、そうっとカメラを男の子に向けてみた。
すると、男の子の好奇心の向きが変わった。
水の中を動くえびから目を離して、わたしのカメラのレンズをじっとのぞき込む。
えびを追うときと同じように、まるくて黒い目で見ている。
わたしは、まるでえびになった気分。
男の子が、無造作に手を伸ばす。
あっ、と思ったら、指でレンズをつついた。
それから、うれしそうな顔をして、なぞる。
中に何が見えていて、何をなぞっているのか・・・
おかげで、わたしのカメラのレンズはベタベタになってしまったよ。